女子美術大学付属中学校

”美術の学びには画室(アトリエ)が必須。女子美には11の美術室がある

 “ゼロからイチ”桁違いの発想力を生む秘密。生成AIの作品にも批判力を発揮!

【注目ポイント】

  • 自分の「立ち位置と向き」を知る積み重ねが発想力を育む。
  • 生成AIを題材に「意図を言語化する力」を鍛える国語授業。
  • 「 共創デザイン学科」で社会課題に挑む女性リーダーを育成。

発想力は自己認識から始まる

AI時代を迎え、「人間にしかできないこと」への関心がかつてないほど高まっている。既存の枠組みを超える創造性、誰も思いつかなかった発想――そうした力を育む場として、女子美術大学付属中学校が注目を集めている。「桁違いの発想力」を生み出す女子美の教育には、確かな理由がある。

「発想力を鍛える魔法のような方法論があるわけではありません」と広報部主任の並木憲明教諭。「ただ、発想力を特別な才能のように語ってしまうのも違うと思っています。大切なのは、現時点での自分の立ち位置と向きを知ること。自分がどこに立っていて、どちらを向いているのかがわかれば、誰でも発想の大海原にこぎ出していけるのです」

女子美では、この自己認識を促すための地道な積み重ねを大切にしている。その代表が「100枚ドローイング」だ。ひと夏にとにかくたくさん描く。画材やテーマは問わない。一見シンプルな課題だが、繰り返し手を動かすことで、描く行為に没頭する心構えが自然と養われていく。そして気づけば、自分がどんな線を好むのか、どんな色に惹かれるのか、思考のパターンが少しずつ見えてくる。

もう一つが「好きなものファイル」。自分の心に響くものを何でも集めるスクラップ活動だ。服のタグ、パッケージデザイン、雑誌の切り抜き、季節の葉っぱまで、気になるものを片っ端から集め、ファイルしていく。「これらの活動を続けていると、自分でも気づかなかった好みや傾向が見えてくるのです」と並木教諭は説明する。ある生徒は集めた写真を見返したとき、同じカメラマンの作品ばかりだったことに気づいたという。自分の感性が、形として目の前に現れる瞬間だ。また、枕元にノートを置いてアイデアを書き留める習慣を持つ生徒もいる。発想は眠っている間に熟成され、朝ふと浮かぶことも多い。こうした小さな習慣の積み重ねが、やがて発想力の土台となっていく。

さらに女子美には「画室(アトリエ)性」という美術教育ならではの環境がある。音楽教育では先生と一対一の「レッスン性」が理想とされるのに対し、美術教育ではアトリエという共同空間で複数の生徒が制作する「画室性」が重要とされる。同じリンゴを描いても、表現は一人ひとり異なる。隣の生徒の作品を見て「あの人はこう表現するんだ、では自分はどうしよう」と考える機会が日常的に生まれる。「曲線がきれいだね」「色使いが独特だね」という友人からの声かけで、自分では気づかなかった嗜好性や持ち味が見えることもある。他者の目を通して自分を知る――こうした環境の中で、生徒たちは自然と自分の「立ち位置と向き」を見出していく。発想力とは生まれつきの才能ではなく、自己理解という出発点を明確にすることで、誰もが育んでいける力といえる。

入試問題にもその精神が表れている。「宇宙人に遭遇したら」という設定で自由に表現させる問題は、正解のない問いに向き合う姿勢を見るものだ。ここでは、どのように状況を読み取り、自分なりの表現へ結びつけていくかという姿勢が見られている。

100枚ドローイングの作品例。自分を認識する手法としてとても効果がある

生成AIと国語が結ぶ学びの三角形

女子美ならではの学びとして、注目を集めているのが若手の国語教員による授業だ。生成AIを使って絵を描かせるという、一見ユニークな課題である。

たとえば「古池や蛙飛び込む水の音」という句をそのままAIに入力すると、日本人が思い浮かべる静かな情景とは異なる絵が生成されることがある。異国の風景や、躍動感あふれるカエルの姿が描かれることも珍しくない。では松尾芭蕉の世界観に近い絵を描かせるには、どのような言葉で指示すればよいか。これを考えるのが授業の核心だ。

並木教諭は、この取り組みを「次世代型の伝達力を伝える授業なんです」と説明する。「AIへのプロンプト(指示文)をどう書くかを考えることで、意図を正確に言葉にする力が鍛えられます。通常の読解が文章から意味を読み取る作業だとすれば、これは意図を言葉に変換する逆方向の訓練。いわば『超読解力』です」

ここで女子美の生徒ならではの強みが発揮される。彼女たちは日々の制作を通じて、自分の中に「こう描きたい」という明確なイメージを持っている。だからAIが生成した絵を見たとき、「自分の意図とどこが違うのか」を的確に読み取ることができる。そして、より意図に近づけるために指示を調整していく。この「意図と結果の差を見極め、改善していく力」こそ、AI時代に求められる新しい能力だ。自分の中に「答え」を持っているからこそ、AIの出力を評価し、よりよく活用することができる。この授業は、読解力・発想力・AIリテラシーという三つの力が結びついた、女子美独自の学びのトライアングルを形成している。近年の入試では、絵のストーリーを考えさせたり、架空の状況で自分を表現させたりと、「正解のない問い」が増えている。言葉だけでなく、非言語的なものを読み解く広い意味での読解とその表現力が求められる時代だ。女子美の教育は、まさにその力を育んでいる。

柔軟な発想にはここちの良い空間が必要~カフェテリア

中高大10年で「好き」を深める

中学では絵画とデザインの基礎を学び、のびのびとダイナミックな作品制作を通じて、描く喜びそのものを体験する。高校1年で「絵画」「デザイン」「工芸・立体」をそれぞれ学んだ後、高校2年からは自らの「好き」を追求するため1コースを選択して集中的に学んでいく。

例年8割前後の生徒が進学する女子美術大学には4学科がある。美術学科、デザイン・工芸学科、アート・デザイン表現学科、そして2023年に新設された共創デザイン学科だ。共創デザイン学科は、グラフィック、プロダクト、ビジネス、テックデザインの基礎を学びつつ、飲料メーカーや製造業など大手企業との産学連携プロジェクトで実社会の課題解決に取り組む。地域の課題解決や持続可能な製品開発など、実践的なテーマに挑戦しながら、女性ならではの共感力とコミュニケーション力を生かし、多様な人々と新しい価値を創造する「共創型リーダー」の育成を目指している。

受験勉強に追われることなく、自分の内なる「好き」を深く追求できる環境がここにはある。中学で自分の好きを見つけ、高校でそれを磨き、大学で専門性を高めていく。これが中高大10年一貫の強みだ。

多様な進路へつながる女子美の学び

女子美の教育は、美術の世界にとどまらない多様な進路へとつながっている。女子美術大学への高い内部進学率に加え、近年は慶應義塾大学や青山学院大学など他大学へ進学する生徒も増えている。普通科ならではの多様な生徒が集まり、「好き」を軸にしながら、一人ひとりが自分をより輝かせる進路を選び、歩んでいる。

卒業生はキャラクターデザイン、映画の美術監督、アートディレクターなど、美術・デザイン・メディア・企画・教育といった幅広い分野で活躍している。在学中に培った創造性と探究心を軸に、それぞれの道を切り拓いている。「作品制作という正解のない課題に向き合い続ける経験は、探究学習の本質そのもの。非認知能力を鍛え、その力が現代社会の様々な分野で評価されているのです」と並木教諭は語る。好きという気持ちを起点に、自分の世界を広げていく。その歩みに寄り添い、可能性を確かな「力」に育てていく場所──女子美はその出発点となる。

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒166-8538 東京都杉並区和田1-49-8
TEL03-5340-4541
学校公式サイトhttps://www.joshibi.ac.jp/fuzoku
海外進学支援
帰国生入試対応有
アクセス東高円寺駅(東京メトロ丸ノ内線)徒歩8分
国内外大学合格実績
(過去3年間)
女子美術、東京藝術、武蔵野美術、多摩美術、東京造形、日本(芸)、京都芸術、東京都立、慶應義塾、国際基督教、学習院、立教、青山学院、立命館アジア太平洋、東京農業、東京電機など

【関連情報】

“好き”を追いつづける中高大10年。ビジネスへの広がりが新しい社会を開く
互いに個性を認め合いながら伸びる。まるで留学しているような校風の学校

女子美術大学付属中学校の教育