巣鴨中学校

男子校では珍しく茶道室がある

日本文化に裏づけされた“真の国際人”教育 医学部からオックスブリッジに広がる進路

注目ポイント

  • “おもてなしの心”と和の尊重、平和の精神を培う茶道教育
  • 書道を通じて歴史への敬意とともに豊かな想像力、自己を見つめる姿勢を育む
  • “人”が主役の国際教育プログラムを通じ育む自ら一歩踏み出す情熱

男子校では珍しい茶道教育で、“おもてなしの心”と和の精神を学ぶ

全国有数の医学部進学実績を誇る巣鴨中学校は、柔軟な思考と硬く強い心を養う教育が伝統だ。学問のみならず芸術、体育、行事を通じ、生徒一人ひとりの個性と可能性を開花させ、目標に向けて力を尽くす胆力を培っていく。また、国際教育においても定評があり、近年はその改革のフロントランナーとしても大きな注目を集める。巣鴨の国際教育は単に英語力の向上や外国文化への理解にとどまらず、自国文化の知識を深めること、これこそが相手の文化への敬意を払い、尊重する精神を培う第一歩である、との確固たる信念がある。

都内の中高一貫男子校では珍しく、専用茶室を持ち、裏千家の先生を招いての本格的な茶道を授業に取り入れているのもその一環だ。茶道は高1の家庭科の実習において1年間で4時間学ぶ。内容は、お茶会など茶道の基礎の座学から始まり、茶道班による茶室でのデモンストレーション見学や実際にお茶やお菓子をいただく体験。また、和敬清寂、利休七則など茶道で大切にされている言葉とその意味を学んだ後、生徒がペアになり、茶室でお茶を出し合う実践まで行う。茶道班の顧問も務める尾形光祐教諭は、「茶会では招待状から茶室のしつらえ、茶器や掛け軸の選定など様々な準備を経て一椀のお茶をお出しする。そんな相手のために心を尽くす“おもてなしの心”の崇高さを少しでも感じてほしい」と語る。

戦国武将に愛された歴史を持つ茶道。生死をかけた日々を送る戦国時代に静寂に包まれた茶室で茶を喫することは、武将たちの平常心を取り戻す手段でもあったという。尾形教諭も「勉強や部活に忙しい日々とは、まったく別の時間が流れる茶室で心を落ち着かせる、そんな気持ちを切り替える体験にもなっている」と語る。限られた茶室という空間では身分、年齢の差なく、どんな相手であっても心を込めて亭主が客をもてなすのが茶の心得だ。“おもてなしの心”を芸術の域にまで押し上げた茶道からは、古来、日本人が大切にしてきた和の尊重や平和の精神をも培っていく。

ノア先生(英国政府勤務)による『紅茶文化』の授業

相手への敬意や思いやりを伝える書道は日本文化を理解し学ぶ入り口

もう一つ巣鴨で日本文化への造詣を深める授業として挙げられるのが書道だ。美しい文字を書くことが書道ととらえがちだが、書道科の熊坂尚史教諭は、なぜ綺麗な文字がいいのかを考えることが大切だという。文字はコミュニケーションツールであるが故に丁寧に書き、相手に読みやすくする。つまりは相手を思いやる気持ちが根底にあるということだ。

また、中国で4000年、日本でも2000年前から脈々と続く漢字の歴史を知ること、この点に熊坂教諭は注力しているという。「1000年続いたものは、この先1000年は続く力がある。漢字の歴史を知ることで、歴史の力に対する謙虚な姿勢を育むことができる」と語る。またその歴史の中でも漢字そのものには時代とともに変遷もある。「漢字が象形文字から変化を遂げる過程を知ることで想像力を培い、自分の未来に何を変えていけばいいのかを考える端緒としてほしい」と熊坂教諭。さらに日本人は、約1000年をかけて、独自の仮名書道を作り上げた。このことから中国の漢字に敬意を払いながらも独自の新しい文化を創造した古の日本人に思いを馳せ、生徒は日本人としての誇りを感じていくという。

巣鴨の書道は中1、2で週1時間の必修科目、高1からは選択科目となっている。中1で書写分野の全般を学び、平安時代の古筆を写し取る体験をする。中2の1学期には「中国書道史」として中国で書き残された漢字の五書体をほぼ原寸で模写し、歴史の流れを身をもって学ぶ。2学期は「日本書道史」として漢委奴國王印から万葉仮名、能書家の空海、最澄の書を模写し、最後に仮名書道独自の芸術的表現法「ちらし書き」まで体験。“字を書きながら景色を作る”ちらし書きは、中国の漢字作品にはなく、日本人独自の美の感覚で平安時代の京の雅の頂点とも称される。3学期には、これまでの学びの集大成として、言葉、書体、文字の配置、構成法など全てをセルフプロデュースする修了記念色紙制作を行う。

「墨と紙、そして筆というシンプルな道具だが、その表現の可能性は無限であり、一本の線を再現するのさえ難しい。模写することで、筆者と自分の違いを常に突きつけられる」と熊坂教諭。そこから筆者の思いを常に想像し、自己と向き合う姿勢も自然と生まれる。書道が自分と他者、日本と他国との違いに思いを馳せる豊かな想像力へと昇華され、敬意を持ってそれらを受け入れる「“真の国際人”を育む礎となってほしい」とその思いを語る。

輝かしい実績を誇る書道部

英国エリートの知性と人格に触れる“真の国際人”を体感できる機会

斬新な国際教育を数多く考案する巣鴨。まずは高1、2の夏休みの3週間、英国の名門イートン校の寮で生活しながら、英語や英国文化に触れるサマースクールが挙げられる。20名の歴代首相を輩出するなど、イートン校の質の高いリーダーシップ教育や人間教育に触れるまたとない機会だ。特筆すべきは、このサマースクールに首都圏の男子校で唯一参加が認められている点だろう。また、同様の体験をできるだけ多くの生徒に、との思いから開催するのが中2、3・高1の希望者を対象にした巣鴨サマースクール。世界の第一線で活躍している英国のトップエリートを講師に招き、夏休みの6日間、長野県の校外施設で行う。歴史、ディベート、プレゼンテーション、ドラマ、スポーツアクティビティなど多彩なレッスンを1グループ10名の少人数に分けて展開。昨年度の一例を挙げると「ユートピアとディストピア」「資本主義国家と独裁主義国家」「日本の皇室と英国の王室」「紅茶の歴史」など幅広い。中でも多くの生徒が心に残ったと語るのが、講師が自らの人生を振り返り、失敗したときの対処法などを語る「motivationcurve」。エリートの失敗談を聞くことで失敗は問題ではなくそこから回復する力の重要性を学んでいく。国際教育部の岡田英雅教諭も「失敗は成功の必須条件かもしれない、という生徒の言葉は何より嬉しかった」と笑みをこぼす。

さらに他校との共同プログラム「Double Helix」では「大量の知識なしに高次の思考は実現しない」との考えのもと、教育、芸術、医療など様々な分野の第一線で活躍する英国講師たちがレッスンを行う。

そのほか巣鴨推薦の生徒は優先的に英国の名門校クライストカレッジ・ブレコン校に留学できる協定締結も見逃せない。兼ねてより可能であった1年留学だけでなく、優先的に転籍が認められ、英国の大学へ直接進学することが可能となった。既に卒業生の金田隼人さんは、このルートでオックスフォード大学へと進学。今や巣鴨生にとってオックスブリッジは現実的な進路選択肢の一つとなっている。

昨年度は数学に秀でているが、英検準2級と英語は苦手という生徒が留学を決めた。「彼はイートン校サマースクールで出会った先生への憧れから、英語が得意でなくても一歩前に踏み出す決意をした」と岡田教諭が語るように、巣鴨の国際教育の根幹は“人”にほかならない。自身や自国に誇りを持つと同時に他者や他国への敬意を忘れない講師たち。プログラムを通じ、直接その素晴らしい知性と人格に触れ、生徒たちは憧憬の念を抱く。それが、生徒たちの学びへの情熱とともに、自ら“真の国際人”とは何かを考え、会得する最高の国際教育となっているのは間違いないだろう。

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒170-0012 東京都豊島区上池袋1-21-1
TEL03-3918-5311
学校公式サイトhttps://sugamo.ed.jp/
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国内外大学合格実績(過去3年間)東京、京都、東京工業、一橋、北海道、東北、大阪、東京医科歯科、神戸(医)、筑波(医)、千葉(医)、防衛医科、防衛、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科、明治、東京慈恵医科、日本医科、順天堂(医)、東京医科、シドニー、ハンガリー国立(医)

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