巣鴨中学校

歴史の風格を感じさせる荘厳なオックスフォード大学の学生食堂で朝食
歴史の風格を感じさせる荘厳なオックスフォード大学の学生食堂で朝食

冒険型の英国社会探究フィールドワークが危機突破力と本質を見極める思考力を鍛える

【注目ポイント】

  • 英国名門校の教師が指導する“真の国際人”を育むプログラム。
  • 冒険・自立・国造りをテーマに探究するフィールドワーク。
  • 繰り返す学びのサイクルで本質を見極める観察技術を習得。

英国縦断の探究フィールドワーク誕生

「英語体験や英語に関連する学びだけが国際教育ではない」。そんな強い信念のもと“真の国際人”を育成する国際プログラムを提供し続ける巣鴨中学校。昨年度からは新たに夏休み中2週間の「巣鴨ビヨンド・ボーダーズ(以下SBB)」が加わった。

2週間をかけてスコットランドからロンドンまで南下し、英国の歴史や文化を体感し思考する内容だ。36名の募集に対し応募者は70名。選考基準は英語の成績プラス「冒険・自立・国造り・チームワーク」の4つを踏まえた志望動機を点数化し、その上位者とした。現地で指導に当たるのは、英国イートン校サマースクールの最高責任者を務めたチャーリー先生をはじめ、現役のイートン校体育科主任で地理も教える教師、イートン校出身でイギリス名門パブリックスクールの一つウェリントン校の現役歴史教師の3名。巣鴨の英国イートン校サマースクールで構築された人脈から錚々たる面々を揃えている。

生徒はオンラインでチャーリー先生から1か月半をかけ事前セッションを受ける。その上で、宗教、帝国主義、統治などの8つから探究テーマを決めて出発。帰国後は探究テーマについてビデオプレゼンテーションを作成しチャーリー先生からのフィードバックを受け取り、完結する。

SBB全体で追求するテーマは「冒険・自立・国造り」。「冒険」は危機突破力の育成を目指すものだ。まさに冒険の課題かのように出発早々に飛行機が欠航するアクシデントが発生。空港での宿泊を余儀なくされ、翌日も飛行機は飛ばず、鉄道での移動を余儀なくされた。また雨天決行を基本とし、雨にも負けずに全日程を完遂した。しかし、生徒は「これは冒険だ!」とばかりに逞しくハプニングや危機を乗り切っていった。

「自立」では、プログラムの後半には設定された予算内での食事の買物や準備、洗濯など全て生徒たちでこなして日常生活における自立を経験させた。

「国造り」では、例えば、英国で移民が最初に辿り着く町とも言われるブリックレーンを訪問し、町や国はどのように形成されるのかを考えるヒントとしたという。訪英後、何日も日本食を食べていない生徒たちは「日本食が食べたい!」と渇望した。これに対し、同行した国際教育部の岡田英雅教諭は「移民の人々も同じで、移民の数だけ母国のレストランができる。つまり自分たちの文化を変えずに広めていくのが自然の成り行きであり、当然そこには摩擦も起こる」と語りかけた。ここには自立した個人の集合体が国であることを実感し、人口に膾炙する“多様性”への疑問や国際人とは何か、自国文化の理解、本質を見極める思考の大切さを引き出す端緒としてほしいとの願いが込められている。

英国の教育に触れ、2000年の歴史を学ぶ

パブリックスクールでのラグビー、ボート競技といった体育の授業で重視されるのは、チームワークの構築だ。SBBで最初に行われるプログラムも球技スポーツ。何度もチーム戦を行い、その都度、話し合い、自他の強みと弱み、改善すべき点を話し合い分析する。「これは社会に出て新しいチームでのプロジェクトを遂行する際と同じこと」と岡田教諭。スポーツを通してのチームワーク構築のプロセスは実社会での生きる力も育んでいく。

また2時間で英国2000年の歴史を辿る野外演劇も鑑賞するが、SBBで訪れた場所のほとんどが劇中に登場する。つまり訪問先は英国の歴史を語る上で不可欠な場所であったことを生徒たちは再認識する。また町中の教会などの建築物を見学することで宗教と都市や人々との関係を考察するほか、心の拠り所となっていた当時の教会の役割についても学んでいった。特にバイキングの来襲後、貴重な書物等をダラム大聖堂に移動させ死守した歴史は、人々にとっての文化や思想、精神性の大切さを物語る。これは社会や国の核となるものが何であるかを潜考する端緒となっていく。

エジンバラ城をバックに参加生徒たち
エジンバラ城をバックに参加生徒たち

英国が抱える課題に触れ、考え、議論する

SBBでは英国社会の影とも言える部分も安全性を担保した上で詳らかにしている。前述の移民が多い街・ブリックレーンでは町中に落書きがある。生徒たちは「怖い」と口にしたが、その背景には居場所のない若者たちの不安や不満があるのかもしれない。目の前の事象や行動はその発露に過ぎず、本質を見極めるための議論も促した。一方、炭鉱が閉鎖された町は政府の支援策により一見、整備され美しい。だが実情は治安の悪化や雇用問題を抱えた町だという。かつては繁栄を見せた主要産業が斜陽となった時、町の整備や支援金が本質的な解決策になり得るのかを考える機会となった。

その他、バイキングの影響が残る町・ヨークへも足を運んだ。異文化の流入は経済の活性化にはつながったが、文化や価値観、生活習慣の違いにより社会的秩序の乱れも生じた。異文化流入は経済面と社会秩序双方の観点から考える必要性があることを学んでいく。

生徒たちは〈観察→まとめ→議論→内省〉という学びのサイクルを毎日行う。同行する先生たちは現地で歴史的あるいは生態系の背景などの説明を必要最低限にとどめる。これにはobservation skills(観察技術)、自分の目で見て気づく力を身につけさせる狙いがある。その上で、各班に一人付く名門大学生のグループリーダーと班ごとに随時議論し、1日の日程を終えると3人の先生が加わり、生徒へ問いかけ、さらに深い内省へと導いていく。

帰国後、SBB参加生徒で顕著なのが家事を自ら行うようになった点だという。自立とは自ら考え主体的に行動に移すこと。「自立は周囲の人がいて初めて成立するものであり、その最小単位が家庭。家庭に貢献できない人は社会にも貢献できない」と岡田教諭。生徒が生きる未来は、流動的で産業の盛衰など様々な社会変化への対応を余儀なくされる。未来を生き抜くためにも社会に貢献するためにも自立する力は不可欠。しかし、岡田教諭は、生徒たちは自立し、育つ力を既に内包していると言う。「その力を摘み取らないためにも、勉学はもちろん、それ以外で芽生えた好奇心も尊重し、決して潰さないことが何より大切」と教育者としての強い思いを語った。

まるでチュートリアルのような内省の時間
まるでチュートリアルのような内省の時間

オックスブリッジへと広がる大学進学

巣鴨では、ほかにも様々な国際プログラムを提供する。「巣鴨サマースクール」は中2〜高1の希望者が対象。イートン校サマースクールと似た体験を夏休みの6日間、国内合宿で行い英国人講師に学ぶ。ここでの体験は英国や英語への強い意欲を生徒にかき立てる人気のプログラムだ。

医療をテーマに据えた「Double Helix:Translation Medicine」では第一線で活躍する英国人医師が来日。ハイレベルな講義内容はもちろんだが、生徒が特に大きな影響を受けるのが医師らの失敗談だ。彼らが失敗を通じて人格が磨かれていった過程、現在の活躍する姿を知ることで、生徒は現状や未来においての勇気と希望、そして学びへの意欲をかき立てられている。

最後に、海外進学で特筆すべきは、英国名門校クライストカレッジ・ブレコン校との「フレンドシップアグリーメント」の締結だろう。現在4名が制度を利用して留学中だ。この制度によりオックスフォードやケンブリッジなどの英国名門大学への現役進学も巣鴨生にとっては現実的な進路の一つとなっているのだ。

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒170-0012 東京都豊島区上池袋1-21-1
TEL03-3918-5311
学校公式サイトhttps://sugamo.ed.jp/
海外進学支援
帰国生入試
アクセス大塚駅(JR山手線)徒歩10分、北池袋駅(東武東上線)徒歩10分
池袋駅(JR線、西武池袋線、東京メトロ丸ノ内線・有楽町線)徒歩15分
板橋駅(JR線)徒歩15分、東池袋駅(東京メトロ有楽町線)徒歩15分
西巣鴨駅(都営三田線)徒歩15分、巣鴨新田駅(都電)徒歩8分
国内外大学合格実績(過去3年間)東京、京都、東京科学、一橋、北海道、東北、大阪、神戸(医)、筑波(医)、千葉(医)、信州(医)、富山(医)、福島県立医科、防衛医科、防衛、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科、明治、東京慈恵会医科、日本医科、順天堂(医)、昭和医科(医)、東京医科、東邦(医)、日本(医)、北里(医)、国際医療福祉(医)、ハンガリー国立(医)など

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巣鴨中学校の国際教育