“語り合う文化”が人を育てる。リーダー育成の現場から見た教育の可能性

細木 聡子

ほそき あきこ

株式会社リノパートナーズ 代表取締役

<Profile>

筑波大学卒業後、NTTに入社。自分らしさを大切にしたマネジメントスタイルで部下との信頼関係を築き、チーム成果最大化を実現した。10年の管理職経験を経て、2018年に人材育成コンサルティング会社(株)リノパートナーズを設立。これまでに4,000人の人材育成に携わる。NTTでの経験で培った独自のマネジメント法をベースに、技術系企業のジェンダーギャップ解消を突破口としたDE&I経営の推進支援を行っている。

Profile Picture

技術系企業に特化し、独自のマネジメント法をベースにリーダー育成に取り組む細木聡子さん。女性管理職を中心にリーダーシップ養成を進めており、技術職の専門知識を生かした組織強化に注力している。リーダー育成の現場から見た、教育の可能性について細木さんにお話を伺った。

(文/富永直美

30年にわたり低下し続ける日本の競争力

IMD(国際経営開発研究所)が毎年発表する「世界競争力ランキング」2025年版で日本は35位でした。同ランキングが開始された1989年からバブル終焉期の1992年まで日本は首位に立っていました。以降、毎年順位を下げ、2024年は38位と過去最低を更新しています。

このランキングは69の国と地域を対象に各国・地域の競争力について、「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4カテゴリー(合計20項目)の341の指標でスコア付けを行っています。4カテゴリーによる日本の順位を見ると、経済状況は23位、政府の効率性は38位、ビジネス効率性は51位、インフラは19位。特にビジネス効率性は、ここ10年間で大きく順位を落とし、ビジネス効率性を構成する項目の一つ、「経営プラクティス」は65位と低迷しています。企業が変化に対応できず柔軟性が欠けている点が競争力低下の主な要因です。

日本の課題は柔軟性・変化対応⼒・イノベーションを企業主導で強化しつつ、日本のよさを残していくことにあります。

協調性・共助は日本の強みであり、グループ連携⼒は国際的にも評価されています。こうした日本的な長所を弱めることなく、多様性を引き出す欧⽶の手法を導⼊して両⽴し、同質化から脱却。異なる考え方を受け止め、化学反応を起こす発想⼒を育むことが重要となります。イノベーションの鍵を握るのは、「多様性」と「チャレンジできる風土」、日本には先送りできる時間は残されていません。

異なる属性・価値観の相乗効果がイノベーションを生み出します。技術系の組織にこそ多様性の導入が必要です。管理職以上の層へ一定割合で多様な人材を参画させることや、女性リーダー・管理職の育成が急務といえます。

世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」2025年版で日本は総合118位でした。「経済活動の参加と機会」は120位、「国会議員(衆議院)の男女比」が129位。「教育」と「健康と生存」のカテゴリーは相対的に改善されてきていますが、経済領域は大きく遅れています。女性役員比率が30%を超える企業は5%未満の企業に比べ、売上成長率が3.8倍高いというデータがあり、女性登用の遅れが業績の機会損失につながっている可能性を示しています。社外取締役の登⽤偏重は現場との乖離を招くため、生え抜きの女性リーダー育成が求められています。技術系人材の特徴として専⾨深化志向が強く、マネジメント職の魅力や意義が見えにくい点が挙げられます。

コロナ禍で“語り合う文化”の重要性を再認識

コロナ禍を経て企業ではZOOMなど、オンライン環境でのコミュニケーションが導入されました。しかし、オンラインでの対話だけでは人間関係の醸成が困難であるため、雑談を含む対話の機会が求められます。人と人との対話はAIには代替できない重要な要素であり、信頼関係の構築とマインド向上に役立ちます。

私は、評価⾯談とは別枠で⽉1回ほどのフランクな対話を推奨しています。時間制約のある⼈に不利であり、非公式情報格差の温床ともなり得る飲み会に替わるランチやアフタヌーンティーといった社内イベントを設定するなど、平等な機会を提供しましょう。また、研修時には、グループディスカッションを強化することで横のつながりが生まれ、ネットワークが構築されていきます。固定観念にとらわれず、家庭内の役割分担を再考することで男女の機会均等が定着することは今でもありません。

学校教育段階でキャリア意識の形成が課題

現在、学校ではダイバーシティ・SDGsが浸透してきており、男女差はなく平等な環境で教育を受けています。しかし、社会に出た際に直面するジェンダーギャップへの対処が必要となります。中学・高校での教育改善の重要性を強調し、より早い段階から平等な職場環境を醸成する必要があります。選択肢を広げ、希望する分野で活躍するためには、自ら環境を作る姿勢を育てること、キャリア意識の形成が課題といえるでしょう。

お問い合わせ

名称株式会社リノパートナーズ
所在地〒102-0085 東京都千代田区六番町15-2 鳳翔ビル4階
公式サイトhttps://linopartners.co.jp/
E-mailinfo@linopartners.co.jp
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