東邦大学付属東邦中学校

外に出て、見て、触れて、体験しよう! 探究学習的部活が育む研究マインド
【注目ポイント】
- 自然体験から研究者マインドを育む生物部。
- 60年の歴史を持つ考古学部が築く、実践的な学び。
- 大学との連携で最新の研究に触れる学問体験講座。
段階的に研究力を育成する生物部
東邦大学付属東邦中学校の生物部には、生物や植物など、様々な興味を持つ生徒たちが集まってくる。マニアックな知識を持つ生徒もいれば、漠然と生き物が好きという生徒もいる。
「生徒たちには、まずは自然の中に出て、実際に生き物を見つけて観察することから始めてほしいんです」と生物部顧問の塩崎大教諭は語る。船橋市にある公園の休耕田は、部員たちのお気に入りの“研究室”だ。トンボやカエル、水生昆虫といった生き物から季節の草花や水辺の植物まで、観察対象は実に豊富。夏休みの合宿では、房総の海と、奥日光というまったく違う場所に行き、そこに棲む生き物たちを観察する。生徒たちは興味のある対象を見つけると目を輝かせて、もっと知りたい、調べたいという気持ちになり、探究心が自然と芽生えてくるようだ。
中2になると、各自が研究対象を決め、個別の研究を始める。例えば植物に興味を持つ生徒が葉に虫を見つけたときは、虫の研究をしている生徒に助言をもらうこともある。こうした部員同士の関わりを通じて、新たな気づきが生まれ、複眼的な思考が育まれていく。
中3では、研究の作法を身につけるため、専門的な論文や図鑑を読む習慣を培う。調べたことをレポートにまとめ、発表を通じて「なぜ?」という問いを深めていく。単なる知識の蓄積ではなく、疑問を持ち、探究する姿勢を重視しているのだ。
高校生になると、外部の科学展への出展を目標に研究を深める。淡水に生息する二枚貝の一種であるイシガイの研究は、3年にわたって先輩から後輩へと受け継がれてきた代表的なテーマの一つ。部室では、ホワイトボードを囲んで活発な議論が展開される。「川にいないはずの貝(イシガイ)がいた。せっかくなら、もっと深く掘り下げてみよう」。予想外の発見から始まったイシガイの研究では、なぜそこに生息しているのか、先行研究はあるのか、本当にその場所にしかいないのか、という具体的な問いが議論される。仮説を立て、検証方法を考える過程では、限られた時間の中で何を優先するべきかを整理し、実験の方法とプロセスを具体的に詰めていく。
こうして校内での実験を重ねた結果、砂が堆積し、かつ洪水時にも砂が流されにくい場所でイシガイの生息数が多いことを発見した。この研究は、日本学生科学賞で高い評価を受けた。
こうした探究のプロセスは、将来の研究活動にも生きている。その一例が、海藻の一種であるアオサの研究だ。在学中にアオサを研究していた卒業生は、大学の薬学部に進学後もアオサの研究を続け、特定の薬剤を使った養殖に成功。陸上養殖アオサとして商品化されるまでに至っている。
「同じ部活の仲間との交流を通じて、互いの研究を高め合える。それが本校の生物部の醍醐味です」と塩崎教諭は語る。今まで出会ったこともない人、気づきもしなかった生き物、経験したことのない事象との出会い。これらが生徒たちの探究心を育む原動力となっている。

手を使い、外に出て学ぶ考古学部
約80名の部員を擁する考古学部は、60年以上の歴史を持つ伝統の部だ。週2回の活動では、校外フィールドワークの企画立案や、合宿で訪れる遺跡などの事前調査に取り組む。
中学段階では「手を使う」ことを重視し、ツノ貝や蝋石などを使ったアクセサリー作りから始め、麻の素材を用いた衣服の再現なども行いながら、縄文時代の息吹を体験的に学ぶ。校外フィールドワークでは、茨城や神奈川の個人所有の遺跡や古墳を訪れ、通常では見学できない貴重な文化財に触れる機会を得ている。生徒たちが調査地を決め、現地での活動計画を立てることで、主体的な学びの姿勢も培われていく。
合宿では、青森の三内丸山遺跡や奈良の古墳など、日本を代表する遺跡を訪問。また1回は、戦争遺跡を訪れることにしているという。「現場で実物を目の当たりにすると、教科書だけでは伝わらない歴史の重みを感じ取ることができます。鹿島海軍航空隊の隊跡や予科練平和祈念館を訪ねた際は、当時の人々の思いに触れ、涙ぐむ生徒もいました」と考古学部顧問の松本史緒教諭は語る。
こうした実地での体験を重ねた高校生たちは、日本考古学協会のポスターセッションなどへの参加を見据え、より専門的な研究へと進んでいく。
最新研究に触れる「学問体験講座」
同校では、文理の垣根を越えた様々な体験学習を用意している。この学習の目玉といえるのが、隣接する東邦大学や東邦大学医療センターで最先端の研究や実習を体験する「学問体験講座」だ。理学部の「生化学で学ぶ酸化還元反応」、薬学部の「錠剤の性質をしらべよう」、健康科学部の「人の意思はどうやって捉えられる?」など、テーマは実に様々。
「大学の学びをそのまま垣間見る貴重な機会。中高生には少し背伸びした内容ですが、現代社会で話題になっている最新のトピックもテーマに上がり、親近感が湧くのも魅力です。最先端の研究を間近で見ることによって知的好奇心が刺激され、主体的な学びの原動力が培われていきます」と岡田美秀広報部長は語る。
中でも特に人気が高いのが「ブラックジャックセミナー」だ。医学部志望者向けの医療体験プログラムとして、内視鏡手術シミュレータを用いた手術体験や、電気メスでの切開・縫合など、本格的な医療体験を提供している。実際の医療現場さながらの体験で、生徒たちは医師の使命感への共感をさらに深めている。
「見て、触れて、体験する」という実践的な学びで、生徒一人ひとりの興味と可能性を育む東邦大学付属東邦中学校。未来を切り拓く生徒たちの無限大の可能性を信じ、邁進する学校である。
学校データ(SCHOOL DATA)
所在地 | 〒275-8511千葉県習志野市泉町2-1-37 |
TEL | 047-472-8191 |
学校公式サイト | https://www.tohojh.toho-u.ac.jp/ |
海外進学支援 | 有 |
帰国生入試 | 有 |
アクセス | 津田沼駅(JR総武線)よりバス15分 京成大久保駅(京成本線)徒歩10分 |
国内外大学合格実績(過去3年間) | 東京、京都、東京科学、一橋、北海道、東北(医)、名古屋、大阪、九州、東京外国語、東京農工、東京海洋、お茶の水女子、筑波、千葉(医)、群馬(医)、旭川医科、秋田(医)、浜松医科、滋賀医科、山口(医)、札幌医科(医)、東京都立、国際教養、防衛医科、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科、国際基督教、東邦、自治医科、東京慈恵会医科、日本医科、順天堂(医)、カリフォルニア(バークレー)など |
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