足立学園中学校

タンザニアの中学校では全校生徒1,420人の前で、腹を括って芸をする生徒たち

何が起こるかわからないことの連続。最後は、腹を括ってやるしかない!

【注目ポイント】

  • 生徒自らの“志”を見出すことを目標に掲げる『志共育』。
  • 未知の世界を知ることで生徒は逞しく大きく成長する。
  • 海外での成功体験が自信とチャレンジ精神を育む。

10代だからこそ得られるものがある

教育方針に『志共育』を掲げ、中高6年間を通じて、生徒一人ひとりが自らの“志”を見出すことを目標にする足立学園中学校。ユニークな数々のグローバルプログラムも大きな特徴の一つだ。これらの取り組みは注目を集め、年を追うごとに受験者数も増加し続けている。

新たな“ 志”グローバルプログラムとして、2022年からアジア・アフリカ地域のスタディーツアーを立ち上げた。このプログラムを実現させたのは、青年海外協力隊員の現職教員特別参加制度を利用し、2017〜19年にラオスへ赴任した経験を持つ原匠教諭。このキャリアから同校の志共育推進委員として海外研修制度の改革に取り組んだ。それまでの同校の海外研修先は英語圏に偏っていたが、世界は英語圏だけではない。アジア・アフリカの国々は、経済発展が著しい一方、人口や貧困、食糧、環境破壊、教育格差、紛争問題など多くの課題を抱えている国も多い。特にアフリカなどは、まさに世界の縮図と言える。そんな英語圏以外の国々を生徒たちに見せたかった、と原教諭。また、「海外ではコミュニケーションが取れなければ生きていけない。英語以外でのコミュニケーションの取り方、そして、そもそもコミュニケーションとは何か、を考える旅でもある」と語る。

スタディーツアーでの様々な出会いを通じ、感受性豊かで、柔軟な精神を持つ10代だからこそ得られる一人ひとりの“何か”が生徒たちを一回りも二回りも大きく、そして逞しく成長させている。

突然のハプニングもアフリカの魅力

第2回となる昨年7月のアフリカ・スタディーツアーには中3〜高2の10名が参加した。9日間の日程でタンザニアを訪問。都市部や港での市場を見学したほか、サバンナや国立公園、コーヒー農園やバナナ農園を訪問。また現地校での交流も行った。

今回のツアーリーダーの大役を果たした杉田さんの将来の夢は医師。小学生の頃から毎年行っていたユニセフの募金時に開発途上国の乳幼児が置かれた厳しい現状の動画を見たという。このことがきっかけで、自分に何かできないかという気持ちから医師として働きたい、国境なき医師団の活動に参加したいと考えるようになった。

今回参加したアフリカ・スタディーツアーが杉田さんにとって初めての海外だった。実は1回目のツアーにも参加を希望していたが、安全面などの不安から両親からの反対があり、断念した経緯がある。諦らめきれない気持ちを抱え、2回目の募集時に行きたい気持ちをまとめて両親の前でプレゼンをしたという。また、保護者同伴の説明会では1回目に参加した先輩が、詳細な情報をまとめて一緒になって親の不安を払拭。晴れて参加の許可を勝ち取り、アフリカへと旅立った。

意気揚々と訪れたタンザニアだったが、1日目に訪れた市場では、英語を話すことにとらわれ過ぎ、積極的に現地の人々とのコミュニケーションが取れなかった。これは参加者全員が同じ状況だったという。

しかし、現地の中学校訪問で杉田さんたち生徒は大きく変わった。事前説明では50人程度との交流だったのだが、いざ訪問してみると想定外の何と全校生徒1,420人が集まっているではないか。「もう、腹を括ってやるしかない!」と杉田さん。全校生徒の前で覚えたての挨拶「Jambo〜!」と大絶叫し、一人ずつ自己紹介。その後も空手や相撲、折り紙、縄跳び、漢字などを全力で披露し、正にやり切った。異国の地でのハプニングを乗り超えた経験は生徒たちに自信を与え、大きな成長へと導いた。

ハプニングはこれにとどまらない。ホテルのプールの水を飲んでしまった生徒が体調を崩してFAMEという病院へ向かい、その日の予定はキャンセルとなった。しかし、このハプニングが杉田さんにとって大きな出会いの機会を与えてくれた。途上国の医療について興味のある杉田さんは、病院内を見学できないかと、ダメもとで直談判し快諾されたのだ。そこで出会ったのがアメリカ人医師のフランク院長だった。タンザニア農村部の医療のために私財を投じてFAMEを設立した人物だ。杉田さんは「フランク院長は自分にとって理想の姿。医者になる“志”はより強くなった。目指す人物像も見つかった」と笑顔だ。探究論文のテーマも『タンザニアの乳児死亡率を下げるのに何ができるのか』に決めた。日本の乳児死亡率推移の歴史、経験から何ができるのかを見つけたいと語る。そして、「アフリカのエネルギーはすごい。特に子どもたちは今後、さらにパワーを増していくと感じた」と語ってくれた。

全財産を投じて病院を建てたフランク院長

ラオスの子どもたちの目の輝きを求めて

“ラオスの子どもの目は輝いている”。これは原教諭の言葉だ。この言葉に興味を持ちラオス・スタディーツアーに参加した中村さん。世界の誰しもが夢を追えて、実現に近づける世界を作りたい、という壮大な“志”を抱いている。  10月の10日間行われ中3〜高2の5名が参加。現地小学校や少数民族の人々との交流のほか、JICA、在ラオス日本大使館、ボーデン経済特区、ベトナム戦争資料館、孤児院なども訪問する密度の濃いツアーとなった。JICAや日本大使館の訪問で「お金だけの支援の問題や、埃を被った学校の実験器具(支援物資)を目の当たりにし、その国、その地域に合った支援のあり方を改めて考える契機となった」と振り返る。また、現地の日本人職員が支援について語る際の目の輝き、熱量に圧倒され、志を持つことの意義を再確認したという。

ベトナム戦争資料館(コープビジターセンター)では今も残る不発弾や地雷についても初めて知ることとなる。実はラオスは世界で最も空爆された国でもあり、被害は深刻で被害者支援は現在も継続されている。そのほか、朝市や障がい者作業所、孤児院、少数民族の村なども訪問した。

日本と比較すれば、貧しく厳しい環境下での生活ではあるが、ラオスの人々が互いに助け合い、目を輝かせながら常に笑顔だったこと、幸せそうな姿が印象的だったと語る中村さん。何不自由なく暮らすことこそが幸せだと信じて疑わなかった中村さんは、ラオスでの経験を通じ“本当の幸せや豊かさとは何なのか”という哲学的問いを突きつけられたと話してくれた。

ラオスの学校の生徒たちの前で芸を披露する

成功体験が自信とチャレンジ精神を育む

同校の“志”グローバルプログラムには前述のアフリカ、ラオス以外にも、オーストラリア・スタディーツアー(中1〜高2)、オーストラリア・ターム留学(高1)、オックスフォード大学短期留学プログラム(16歳以上)などがある。

中1でオーストラリア・スタディーツアー、高1でオーストラリア・ターム留学、続いて第1回アフリカ・スタディーツアーに参加し、さらに高2でのラオス・スタディーツアーではリーダーとしてメンバーをサポートし、現地の人々と率先して交流したのが田中さんだ。

多くのプログラム体験から「海外では何が起こるかわからない。その時に大切なのは、腹を括って全力でやり切ることに尽きる。海外で自分が何かやり遂げたという成功体験は、強い自信とチャレンジ精神を芽生えさせてくれる」と振り返る。そして「自分たちの傍には、生徒に寄り添い、信じて挑戦させてくれる校長先生を始め、熱い心を持った先生方がいる。それが足立学園の魅力です」と力強く語ってくれた。

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒120-0026 東京都足立区千住旭町40-24
TEL03-3888-5331
学校公式サイトhttps://www.adachigakuen-jh.ed.jp/
海外進学支援
帰国生入試
アクセス北千住駅(JR常磐線、東京メトロ千代田線・日比谷線、東武スカイツリーライン、つくばエクスプレス)徒歩1分
京成関屋駅(京成線)徒歩7分
国内外大学合格実績(過去3年間)東京、京都、東京工業、北海道、東北、名古屋、筑波、東京農工、東京藝術、横浜国立、千葉、埼玉、宇都宮、富山、静岡、広島、長崎、琉球、埼玉県立、千葉県立保健医療、会津、水産、防衛医科、防衛、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科、獨協医科、岩手医科、東北医科薬科、イリノイ、デューク、北京言語など

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