芝浦工業大学附属中学校

〈SHIBAURA探究DAY〉探究発表では、プレゼン、ポスターセッション、動画と様々な手段で活動成果を発表

テクノロジーを活かした未来創造力で社会課題の解決にチャレンジ

注目ポイント

  • 2021年より2つのPBL型探究からなる「SHIBAURA探究」を開始
  • 探究IT・探究GCの学びを駆使し、社会課題の解決に取り組む
  • 自ら学びをデザインする「SD」で主体的に学ぶ力を育成

男女共学化でカリキュラム刷新 社会課題をテクノロジーで解決する「IT」

2021年4月、共学化を機に、探究を核とした「SHIBAURA探究」の授業をスタートした芝浦工業大学附属中学高等学校。同校の強みである「STEAM教育」のみならず、PBL(問題解決型学習)を取り入れた学びで未来を創造する人財育成を目指す。

「SHIBAURA探究」は、「IT(Information Technology)」と「GC(Global Communication)」の2つの学びを導入。中3の1学期までそれぞれ週1時間が充てられている。

「IT」の授業では、“理工系の知識で社会課題を解決すること”が目標だ。探究科主任の岩田亮教諭は、「おもしろい、楽しいと感じることが生徒の学びを進める」という考えのもと、「ワクワク感と学びをつなげること」「SHIBAURAにしかできない探究をすること」を重視し、生徒の興味を引きやすいテーマでプログラムを作成。最先端のIT機器を駆使した授業は、どれもワクワクしながら遊び感覚で学べる内容で、アンケートでは生徒たちの9割近くが「非常に満足」「満足」と答えている。

例えば、中1の1回目となる授業では、宇宙空間で実際に起きた事故を題材にした映画『アポロ13』を鑑賞したあと、「ものづくりにおいて大切だと思ったこと」を3つ書いて提出する。エンジニアの倫理思考を漠然とながら考察するのに役立つという。

3回目の授業である「ドラえもんになってもらいます」では、ドラえもんのストーリーに登場するシーンをもとに課題が出される。一人ひとりがオリジナルの「秘密道具」を絵に描き、どんな機能があって誰のためにあるのかを考える。ゼロからアイデアを考えることは簡単とは言えないが、チームごとによいアイデアを選んでブラッシュアップし、協働してアウトプットするプロセスを学んでいく。

プログラミング初心者でも楽しく覚えられるよう開発された言語「scratch(スクラッチ)」を用いてゲームを作成し、そこで覚えたscratchを使ってドローンの飛行に挑戦する授業もある。この授業のゴールは、ドローンをただ飛ばすだけではない。2人1組がチームとなってプログラミングを使い、最終的には宙返りさせるなど、30もの飛行制御ミッションをコンプリートすることが目標だ。生徒たちの中には、ほんの数分でプロペラ音を響かせてドローンを飛ばすチームもあれば、うまく指令が届かず、悩むチームもある。教員は子どもの主体性を重視しているため、たとえ上手に飛ばせなくてもどうすればいいかを自分たちで考えさせる。生徒たちは最初に立ち戻り、仮説を立て、再検証してソースコードを確認する。頭の中で考え抜いた末にドローンを指令通りに飛ばすことができると、自然と「やったー!」という達成感あふれる声が聞こえるという。プログラミング学習はモニタ内で完結させることも可能だが、あえてドローンのような実機を使用する理由について、岩田教諭はこう語る。「エンジニアや研究開発者にとって、プログラミングを実機に転送してトライアンドエラーを繰り返すことは基本中の基本。万が一、入力したソースコードが誤っていたら人を傷つけたり、物を破損したりする恐れもあり、生徒にはそうした肌感覚を早い段階から味わってほしい」。

さらに、学校だけで完結する授業ではなく、社会との接点を持つことの意義を重視。3学期には、現場の担当者を呼んで企業が抱える課題をヒアリングし、生徒が解決策を探る授業も実施。チームで協働して課題を検討し、アイデアを提案するのは社会人として必要不可欠なスキル。そこへITの高度な知識が加わることで、社会問題を解決する引き出しの一つになるのだ。

豊洲から地方へ視野を広げる探究「GC」で多様さを理解し世界で活躍する人材を育成

もう一つの探究「GC」のカリキュラムは、学年を経るごとに子どもたちの視点が豊洲から東京、地方、そして世界へと広がっていくようデザインされているのが特徴だ。中1は「TOYOASOBI」というテーマで学校周辺を街歩きすることからスタート。50~60年前の豊洲と、現代の地図を併記した「探Qマップ」を片手に、自分たちがどのような場所と時代にいるのかを考察する。さらに水陸両用バス「スカイダック」で海から湾岸エリアを知る授業や、この地に集積する重工業や水産業などの企業訪問をする機会もある。

中2では、フィールドを地方(長野県)に移し、りんご農家などを回って各地域の課題を解決するためのアイデアを模索。生徒自ら廃校利用、環境、農業、スポーツなど興味関心に沿った行き先を選び、高校探究につなげる狙いもある。中3の9月には、アメリカのシアトルをはじめとする4か所への海外教育旅行を実施予定。

探究GCを統括する金森千春教諭は、この2年間、探究活動を経験した生徒の成長は目を見張るものがあるという。「課題解決に対する取り組みが主体的になり、プロジェクト型学習を回す力がついてきているのを実感しています。特にグループ学習での各自の取り組みは安心して任せることができる。どんな場面でも考えて悩み、試行錯誤することをいとわないのが芝浦生の特徴。今後も生徒と一緒に授業を作ることを大切にしていきたい」と話してくれた。

<探究GC>中1の豊洲の街歩き。昭和初期の産業遺産と土地の歴史、現代の豊洲を学ぶ

探究IT・GCで身につけたスキルを活かし、2年半の総まとめを行う「総合探究」

ITとGCでの学びは、中3の2学期から始まる「総合探究」で花開く。2年間で身につけた技術や思考、表現方法を駆使し、各自が課題を見つけ、解決に導くプレゼンテーションを行う。興味深いのは、発表の形式が決められていないこと。絵画や動画、ものづくり、音楽などどんな形式のプレゼンが飛び出すのか、これからの中3生の活躍ぶりが期待されている。

「SD」で自らの弱点を発見して分析し自らの学びをデザインして主体性を養う

さらに「日々の授業」に重きを置く同校では、先取り教育をやめ、主要5教科を4時間に縮小。授業の密度を濃縮させることで、生徒が主体的・効果的に勉強を進められる「SD(Self Development:自立学習)」の授業を設定。週2~3時間のSDの授業は、オリジナルの「芝浦HR学習ノート」やITアプリなどを使い、何を学習すべきかを考え、自らの学びをデザインする。

時間の使い方は生徒により異なり、宿題をする子、授業の復習や応用問題に挑戦する子、プレゼン資料の作成をする子、英検の勉強をする子など様々だという。

主要科目の授業時間を短縮する分、勉強の遅れをフォローする体制も万全だ。

放課後に教室を開放して実施する「学習サポート」は、芝浦工業、早稲田、東京理科、東京工業など名だたる大学の現役生がチューターとして学びをサポート。先輩の姿を間近にした生徒たちは、勉強以外の大学生活についても気軽に質問。学習へのモチベーションが上がると好評だ。

こうした手厚い指導により、生徒の約8割が理工系大学に進学。高2からは芝浦工業大学への推薦進学を目指す「一般理系コース」や上位大学を目指す「特別理系コース」「文系コース」もあり、ここ数年、国公立や難関私立大学などへの合格者が増加するなど、高い合格実績を誇っている。

「SDの導入によってこちらが働きかけなくても勉強する生徒が増えている。彼らの学ぶ意欲も高まり、さらなる相乗効果が生まれています」と斎藤貢市教頭はいう。芝浦ならではの芝浦でしかできない教育。生徒の秘めた力を最大限伸ばす、理系屈指の学校がここにある。(文/佐久間香苗)

<探究IT>東京メトロの方からいただいた課題の解決策を考え発表

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒135-8139 東京都江東区豊洲6-2-7
TEL03-3520-8501
学校公式サイトhttps://www.fzk.shibaura-it.ac.jp
海外進学支援
帰国生入試
アクセス豊洲駅(東京メトロ有楽町線)徒歩7分
新豊洲駅(ゆりかもめ)徒歩1分
国内外大学合格実績(過去3年間)芝浦工業、東京工業、東北、筑波、東京農工、信州、慶應義塾、早稲田、上智、東京理科など

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