三田国際学園中学校
際立つインターナショナルな環境の中で、多様なルートから科学の道に進む生徒たち
注目ポイント
- 単なる「知識の習得」ではなく「考える」ことを重視
- インターナショナルな環境と卓越したサイエンス教育で「世界標準の教育」を実施
- さまざまな研究が可能な充実した大学レベルの実験環境
10代のポテンシャルを無限に引き出す三田国際学園独自の教育
「世界標準の教育」を追求し続けている三田国際学園。その実現に向けて掲げる“THINK&ACT”“INTERNATIONAL”“SCIENCE”の3つのキーワードは、同校の教育の根幹となっている。世界各国からの帰国生や外国人を親に持つ国際生、29名(2022年度)のインターナショナル教員(IT)がいる校内には日常的に英語が飛び交う。海外の学校さながらの環境で一般生たちは様々なバックグラウンドを持つ国際生やITから多種多様な文化、「使える」英語を、国際生たちは日本語や日本文化を学ぶことができる。このように互いに刺激し合う三田国際での生活そのものが、生きたインターナショナル教育であり、多様性を尊重する姿勢を育むのだ。
同校の教育の特徴は、全クラスで実施している相互通行型授業。教員はファシリテーターとして〈疑問→仮説→検証→結論〉の論理的思考のプロセスをたどりながら授業を展開する。教員が質問や発問として投げかけるトリガークエスチョンは、生徒の知的好奇心を刺激する「引き金」だ。クラス内には化学変化が引き起こされ、生徒の知的探究心や自由な発想が喚起されていく。
これと並行してサイエンス教育も重視。入学後、全生徒が「サイエンスリテラシー」を履修し、問いと仮説の立て方、情報収集や文献の読解、レポートの作成、プレゼンテーションの実施など、学問分野を超えた幅広い視野から「探究」の技法を習得する。同校には博士号を持つ教員が5名在籍(2022年度)、大学教員、理化学研究所研究員の経歴を持つ教員のほか、ITにも博士号取得者がいる。第一線で活躍する研究者が生徒の伴走者として、〈収集→分析→構築→表現〉という科学的アプローチに即して「好奇心」を「探究」に変容させるサイエンス教育を6年にわたって実践していく。
クラス編成にも同校の特色が表れている。全クラスでインターナショナル教育、サイエンス教育を軸としながら、中1ではインターナショナルクラス(IC)、インターナショナルサイエンスクラス(ISC)の2つのクラスを設置。理数分野に意欲的な生徒は、入試時またはその後の選考によって、ISCから専門性の高いメディカルサイエンステクノロジークラス(MSTC)を中2で選択できる制度を設けている。
そんな魅力あふれる同校の特徴を、生徒の視点から2人の卒業生に語っていただいた。
将来の目標は「研究者」 その第一歩は中学から始まっていた
北里大学理学部化学科に在学するIさん。将来は研究職に就き、化学的な側面から創薬研究を進めることが目標だ。Iさんは中学受験時点で理系志向が強く、サイエンス教育が充実していた三田国際を志した。
同校では、自ら選んだテーマを2年間研究するゼミナールが中2からスタートする。ここでの学びが化学へのさらなる興味を引き出した。Iさんが設定した研究テーマは〈身の回りの微生物〉。「土や貨幣、ドライフルーツなど、日常にあるものから自らの手で微生物をプレート上に単離し、その姿を顕微鏡越しに捉えたとき、驚きと同時に科学の魅力に取りつかれました。当時、微生物への興味は強くありませんでしたが、この基礎ゼミナール(現「基礎研究α」)のおかげで知らなかった分野の知見を得て、自分の世界を広げることができました」。その後、微生物について調べるために自主的に文献をあたり、粘菌の単離や生態への理解を深めた。
実践を通じて身につけた研究作法は、中学の「基礎研究α」から発展した高校MSTCの「基礎研究β」で飛躍的に進化。「三田国際は研究設備がとても充実していました。博士号を持つ先生方から直接指導を受けながらオリジナリティのある研究を計画し実施しました。多くの大会や学会で発表し講評を受けるなど、素晴らしい環境で探究することができました」と振り返る。高校時代は日本農芸化学会年会にも参加した。大学院生や企業が参加する学会で第一線の研究を肌で感じ、研究者になるという目標が明確になった。
研究者が担うべき役割について、Iさんは次のように語る。「世の中を便利にしてきた技術や物には、戦争などに用いるために開発されたものもあると知ったときは衝撃を受けました。しかし、その成果を技術的に広く応用できるという見方もできます。社会的な取り締まりをしっかり行った上で開発を進められる環境づくりができれば、将来の発展につながるはず。科学者は研究成果に対し、どの点が有用なのか、あるいは悪用されてはいけないのかを明確にした上で世に出すことが重要だと思っています」。インターナショナルな校風の同校でハイレベルなサイエンス教育に触れてきたからこそ、大学生でありながら一人の科学者として高い志で学業に打ち込んでいるのだ。
文理を問わず様々な学びに触れて見つけた道は「化学」
6年間、現ISCに在籍したYさん。「三田国際の日常的に英語が聞こえてくる環境はとても貴重でした。帰国生の友人の影響も大きかったですね。入学直後は英語を話すことにハードルがありましたが、友人がネイティブの先生と対等に話す様子を見て自分も英語で話したいという気持ちになり、英語との距離が縮まりました」と語る。
東京理科大学理学部第一部化学科に進学したYさんは、中学の「基礎ゼミナール」では、村上春樹氏『パン屋再襲撃』について「パン屋再襲撃を比喩表現で読み解く」をテーマに取り組んだ。ユング心理学の夢分析を活用しながら研究し見解をまとめ、文学部の大学教員・学生に発表する機会をいただいた。高校での課題解決型プロジェクト「Liberal Arts」では、日本とハワイのフードロスについて比較調査し、問題点と対策法について探究、学校でのフードロス問題に取り組んだ。このような多様な学びの中からYさんが見つけた、打ち込みたい領域、それが化学だった。「ISCは文系・理系を絞る際に最も時間をかけられるコース。私の場合は高2で理系を選択したので、文系科目の楽しさもたっぷりと感じることができました」。
化学の道を目指した理由として、三田国際の教員の存在も大きい。「印象に残っていることは、楽しそうに理科の授業をする先生。高校の範囲外の質問をしても、丁寧に対応してくださったことが何度もありました。そのおかげで大学レベルの化学にも強い興味を持ちました」。日に日に化学への興味を募らせるYさんの様子を見た教員は、本来は主にMSTCの生徒が使用する、大学研究室レベルの設備を備えるサイエンスラボでの研究に許可を出したという。
Yさんは今、教員を目指している。「化学というと、『化学物質=身体や環境に悪いもの』と捉えられがちですが、化学にまつわる事象は私たちの身近に存在し、危険でないものも多くある。教員になって化学の面白さを伝え、化学的見地から物事の事象を捉えられる人を増やしたい」と語る。この思いは、同校在校中に化学の醍醐味に気づいたYさん自身の体験から生まれたものだ。
IさんとYさんは現在、三田国際の理科助手として後輩のサポートにあたっている。先輩たちの生き生きとした様子は、在校生のロールモデルになっているに違いない。
最後に未来の後輩たちにメッセージをお願いすると「今、興味・関心がなくてもふとしたきっかけで没頭してしまうことは沢山あります。固定観念に捉われず視野を広げてあらゆることに挑戦してみてください。今だからできること・するべきことを明確にして目標に向けて頑張ってください」と語ってくれた。(文/菅原淳子)