本郷中学校
自由と多様性尊重の校風が見える 生徒主体の卒業論文は中1から始まる!
注目ポイント
- 「文武両道」「自学自習」「基本的生活習慣の確立」の教育目標
- 学年を超えた強いつながりを勉強面にも生かす教育
- 「卒業論文」で論理的思考力や自己表現力の向上をはかる
先輩・後輩の縦のつながりによって双方が切磋琢磨しながら成長する
「文武両道」「自学自習」「基本的生活習慣の確立」を教育目標に掲げる本郷中学校。伝統的に部活動が盛んで、部活動を通して学年を超えた先輩・後輩のつながりが生まれ、それが人格形成にも生かされているという。
また本郷には、年に数回、中2生が中1生に教える「数学合同授業」がある。この授業では、先輩が後輩に、数学定期考査の対策や勉強方法などをアドバイスする。中1生は、先輩の姿に憧れて勉強に励むようになり、中2生は、後輩へのサポートを通じて自らの学習姿勢を振り返る機会になる。ここでも学年を超えた交流によって生徒自身が主体的に学び、成長していく好例といえよう。
中1のテーマ探しから始めて3年間をかけて仕上げる「卒業論文」
こうした校風のもと、本郷が力を入れているのが中学の「卒業論文」だ。まず、中1では、教科ごとに50~100冊ずつリスト化された「推薦図書一覧」を参考にテーマを選ぶ。岩波新書や中公新書などを中心に中学生には難しい本もあえて加えるのも、知的好奇心を育み、読解力や理解力を鍛えたいという教員側の狙いがある。中2の社会科では、論文作成の作法を学び、中3の1学期にテーマを決定する。夏休みに原稿を書いて添削を経たのち、冬休み明けに3千字以上の完成原稿を提出する。卒論は教務部が中心となって担当するが、これは全教科を等しく大切にする本郷の教育観を反映している。教務部長の金子孝太郎教諭は、中学で卒論に取り組む意義について、「論理的思考力の養成や自己表現力の向上はもちろん、自分なりに答えを出す経験を積むことで、世の中にどう貢献できるかを考えるきっかけにもなります」という。
多様なテーマであふれた卒業論文 「卒論発表会」でテーマ選定や書き方も伝授
本郷の卒論は、枠にとらわれない自由な発想で、多様性のあるテーマも多い。
海洋プラスチックゴミの深刻な問題を取り上げた本を読んだというAさんは、「どのように私たちはプラスチックと付き合っていくのか」と題した卒論を執筆。ゴミ分別について地元スーパーを調べたり、市役所で話を聞くなどして仮説を立て、検証する流れがしっかりしている点が高く評価された。
昆虫食について研究したBさんは、「バッタの大量発生は日本人に何をもたらすのか」をテーマに選定。アンケートツール「Googleフォーム」を活用し、70名の生徒に昆虫食に関する調査を実施。環境負荷の低さ、栄養価の高さなどの意義にも言及するなど、コロナ禍で活動が制限される中、ICTを使って説得力のある論文に仕上げた点が評価された。
Cさんのテーマは「スマホ文化の弊害~日本の現状と問題点~」。様々なデータをもとにスマホ依存について考察。グラフを多用し、因果関係に基づいて理論を進めている点が秀逸と金子教諭は振り返る。
Dさんは、少年犯罪を特集したテレビ番組を見て「少年非行者の社会復帰について」という卒論を執筆。日本で非行少年の検挙数は減っている一方、再犯率は横ばいで推移していることに着目。非行少年の就労支援をするデンマークの機構「ハイ・ファイブ」の取り組みを例に挙げ、日本との違いを考察。先行研究の紹介だけでなく、一歩先の提言にまで踏み込んでいる点が卓越していたという。
優秀な卒論を執筆した生徒は、中2~3、高1を対象とした「卒論発表会」でプレゼンをする。卒論の内容はもちろん、テーマの選び方や調べ方も詳しく披露する。優秀な先輩に触発され、後輩たちも高い意欲をもって卒論に挑む。事実、5年前に発表会を始めてからレベルの高い卒論が増加。学年を超えた交流が、生徒の“やる気”に火をつけたのだ。
生徒一人ひとりの個性と多様性を重んじる自由な校風の中で、着実に成長する生徒たち。「身近な課題を発見し、解決する力は学校の学力には現れにくい。だからこそ卒論を書くことを通して興味のあることに積極的に挑戦してほしい」と金子教諭は強く語った。(文/佐久間香苗)
学校データ(SCHOOL DATA)
所在地 | 〒170-0003 東京都豊島区駒込4-11-1 |
TEL | 03-3917-1456 |
学校公式サイト | https://www.hongo.ed.jp/ |
海外進学支援 | 有 |
帰国生入試 | 無 |
アクセス | 新巣鴨駅(JR山手線、都営三田線)徒歩3分 駒込駅(JR山手線、東京メトロ南北線)徒歩7分 |
国内外大学合格実績 (過去3年間) | 東京、京都、東京工業、一橋、北海道、東北、名古屋、大阪、九州、筑波、東京医科歯科、東京農工、電気通信、東京海洋、東京外国語、東京学芸、浜松医科、横浜国立、千葉、防衛、防衛医科、東京都立、横浜市立、早稲田、慶應義塾、上智、日本医科、東京慈恵会医科、東京理科など |
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