文化祭を10倍楽しみながら教育力を探る方法
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文化祭探訪(桐朋中学校)
文化祭から見える生徒たちの素顔と驚くべき才能
文化祭は、単なる息抜きのお祭りではない。教科書の枠に収まらない中高生たちの好奇心や探究心、そして底知れぬ才能が一気に花開く舞台でもある。JR国立駅を降り、一橋大学の大学通りの先に立地する桐朋中学校・高等学校で毎年6月に開催される文化祭が「桐朋祭」。2024年度(第73回)に実行委員長を務めた早稲田大学文化構想学部の奥住仁さんに、文化祭の楽しみ方のコツと、その舞台裏を聞き、そこに息づく才能教育としての部活動の素顔を探った。

桐朋祭を陰で支える実行委員会
桐朋祭は、生徒が主体となって企画・運営する桐朋最大の行事だ。第73回桐朋祭には、のべ1万人を超える来場者が訪れた。
その舞台裏を半年以上前から支えてきたのが、当時高校2年生だった奥住さんだ。桐朋祭は高校2年生が中心となって支える行事で、翌年の実行委員長は立候補制で高校1年生の9月頃に決まる。委員会は116名が完全希望制で参加し、実行委員長・副実行委員長(2名)のもと、音響・総務・飲食・物品・プログラム・会計・装飾・催物の委員会に分かれて活動する。
9月に実行委員長と各委員会の委員長が決まると、10月にはその年のテーマを決定する。奥住さんの期のテーマは「鯨波(とき)」。鯨の雄大さと、波のように力を合わせる願いを込めた言葉で、第73回の「73」を「なみ」と読む語呂合わせにも因んでいるという。
準備は授業終了後から下校時刻の18時までの放課後が中心で、委員長はほぼ週6〜7日活動する。「やる気のある生徒が多いので、全く苦ではありませんでした」と奥住さんは語る。前年の委員会からはUSBにまとめられた大量の引き継ぎ資料が渡され、月別のタスクや印刷所との交渉術などが代々受け継がれている。

生徒たちの「オタク魂」が輝く祭典
桐朋祭には一般的によくあるクラスごとの出し物はなく、参加の形は幅広い。文化部はもちろん、有志で集まった団体や、学年単位でテーマを決めて取り組む中学生、そして生徒が教壇に立ち授業を行う「生徒による授業」という個人での参加まで、実に様々だ。「生徒による授業」の内容も興味深く、「Shall we hack? 〜ハッキングの実践と解説〜」から「人よ、ゴリラへ進化せよ〜現代社会を救うゴリラ社会〜」までバラエティに富む。そのほか運動部も練習試合の公開など参加は自由で、ステージ企画は年ごとに趣向が変わり来場者を沸かせる。
奥住さんが勧める文化祭の楽しみ方はシンプルだ。「まず桐朋祭公式サイトで気になる企画を事前にチェックすること」。目当ての教室を訪ねたら、そこで足を止めず、周辺の出し物にも寄り道してみるといい。思わぬ掘り出し物に出会えるかもしれない。「そして何より、生徒に積極的に話しかけてみてください。聞かれたら、みんな喜んでたくさん解説してくれますよ」と笑顔で語る。
なかでも見逃せないのが理系クラブだ。実際、来場者投票で決まる桐朋祭大賞では、生物部が本物の水族館さながらの展示で来場者を魅了し見事1位に輝いた。地学部はモデルロケットの打ち上げや砂金掘り体験、プラネタリウムを駆使した展示で2位を獲得。廃品の分解・再利用からロボットなどを生み出す電子研や、教室をまるごと使った鉄道ジオラマで知られる「てっけん」(交通研究部鉄道研究班)は3位に入賞した。
このほかにも多彩な賞が用意され、音響部門賞は洋楽カバーバンド「SUPER≡SONIC」、飲食部門賞はポップコーン店が選ばれた。中庭を彩る横断幕形の垂れ幕を審査する「垂れ幕グランプリ」は奥住さんの期から新しく始まった企画で、これらも来場者投票で選ばれる。校長先生自らが選ぶ校長特別賞は、図書委員会の書評バトルが受賞している。

文化祭は、隠れた才能教育を発見する機会でもある
「桐朋には、自分の好きなことをとことん突き詰めている生徒がすごく多いんです」と奥住さんは言う。部活動は、いわば天井のない才能教育の場だ。電子研は予算も部室もない有志の集まりから始まった。限られた環境だからこそ生まれる知恵と工夫はMaker Faire Tokyoでの受賞歴にも表れ、その後、正式な同好会に昇格している。地学部も全国規模の砂金掘り大会の常連校だ。
こうした活動を支えるのが、口径40センチの反射望遠鏡を備える天文ドームや太陽観測所、プラネタリウム、野鳥観察も行われる校内の雑木林「みや林」といった桐朋の施設群。さらに通学路である大学通りの先には一橋大学が立地し、登下校そのものが知的な刺激に満ちている。
これらの施設や環境も含め、文化祭は志望校探検の大きなチャンスでもある。奥住さん自身、小学5年生のときに桐朋祭を訪れ「ここに通いたい」とその場で心を決めた。生物部の水族館さながらの展示に憧れて入学を決めた後輩も少なくないという。「桐朋祭に来てもらえれば、桐朋がどんな学校か、よくわかると思います」と語る奥住さんは、他校の文化祭にも足を運んでみることも勧める。「いろんな学校を見比べて、心が動いた学校を選ぶのが一番。文化祭を見ることは、学校選びにおいて本当に大事だと思います」
「実行委員会は主役ではなく、あくまで裏方」と奥住さんは強調する。参加者がやりたいことをやれるようサポートすることこそが使命だ。それでも、桐朋祭を自分たちの手で一から作り上げられることや、新しい企画を先生方に提案して実現させる過程は、何物にも代えがたいやりがいだったという。半年間ともに走った仲間との絆は深く、先輩・後輩を含めた縦のつながりは、卒業した今も大切な財産になっている。
最後に受験生へのメッセージを尋ねると、「頑張っている人は、やっぱりかっこいい。それを一番強く感じられる場所が桐朋祭だと思うので、ぜひ足を運んで、桐朋生の深みを感じてください」と語ってくれた。
(文/松岡理恵)
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