東京電機大学中学校

中1情報の授業で使用する「こくり」
中1情報の授業で使用する「こくり」

“なぜ”という問いがスタートライン 理系教育でも大切にするのは人間力

注目ポイント

  • 実践重視の理科・情報教育で、学びの礎を確立
  • 「探究」とフィールドワークで課題解決力を育成
  • 「5つの力」を涵養し、豊かな人間力を形成

創立以来続く、実践を重視する理科・情報教育

今から115年前、日本が“技術立国”になる夢を抱いて、2人の青年が夜間学校を創立した。これが東京電機大学の始まりだ。「『理科』と『情報』は開校当初からの主要科目です。創立以来培われてきた文化を大切に、時代に合わせて進化し続けたい」。昨年4月に就任した平川吉治校長は、力強くこう語る。

両教科における最大の特色が「実践教育」だ。まず、「理科」は実験回数が多い。高2までに行う実験・観察は実に100以上。そして実験道具は手作りにこだわる。仕組みや原理を理解することで、理論の奥に潜む根幹を知るためだ。生徒全員が「実験BOX」を持ち、そこに自分が作った道具や用意された試料を保管する。授業で幅広い分野の実験・観察に触れ、箱に道具が増える度に、生徒は理科のおもしろさや本質に気づき魅了されていく。その過程で理科的センスが養われ、理論を現実の現象と重ねてイメージすることができるようになっていくという。

「情報教育」も実践にこだわる。中1で挑むのは、プログラミング学習ロボット「こくり(日販テクシードが開発したタブレット一体型ロボット)」を活用した簡単なプログラミング。「考える→実行→修正→再実行……」と、トライ&エラーを繰り返しながら、自分のアイデアが次第に実現化していく楽しさを体験する。そのうえでVBA 、Pythonといった高度なプログラミング言語へと段階的に進む。最終目標は、描写するために自分が考えたプログラムを完成させ、人を楽しませること。伝えたいことややりたいことを考え、その実現を目指すなかで、想像力や創造力、表現力が飛躍的に伸びていく。

中学の理科では、実験道具から作製
中学の理科では、実験道具から作製

「なぜ」「どうして」がスタートライン 課題解決力を養う探究学習

新たな取り組みも始まった。昨年度から独自教科「探究」を全学年に週1時間設置し、課題解決力の育成を図っている。

まず挑むのは、問いの作り方だ。例えば釘とネジを配り、「問いを立ててごらん」と呼びかける。初めは戸惑っていた生徒も「5W1Hで考えてみたら」とヒントを与えると、「なぜ釘とネジがあるんだろう」「どのように使い分けているんだろう」と次々に疑問が湧き出る。 問いを作ることは、問題意識を持つこと。これが多様な視点や幅広い思考につながっていく。

2年次は〈調べる〉、3年次には〈気づく〉をテーマに、グループワークやフィールドワークを頻繁に行う。自ら立てた問いの答えを追い求め、3年間の積み重ねを卒業論文にまとめて発表。その過程において、修学旅行などの行事や他教科の授業との連携も図り、さまざまな思考の実践の機会として位置づけていく。

これらの取り組みによってはぐくまれる力は、解決できない問題や大きな壁にぶつかっても、別の視点から新たな問いを立てアプローチする課題解決力だ。同校では従来、理科・情報教育により探求心や実証精神を重んじてきた。これらが課題解決力と結びつくことによって、実際の社会問題を解決する応用力へと進化させることができる。

自ら考え、決断するために5つの力の育成に注力

高校卒業時には全体の約7割が理系へ進学する同校。実社会で活躍する人間を育てるために何が必要だろうか。科学技術教育からスタートした学校だからこそ「人間教育にこだわりたい」と平川校長は語る。戦争や環境問題など、科学の世界における倫理観や社会的責任は不可欠だ。また、刻々と変わり続ける現代社会にあって明確な答えはどこにもない。

「重要なのは『何を大切にしたいのか』。いわゆる軸であり、価値観、問題意識と言い換えてもいい。それさえあれば、世の中がどんなに変わろうと、自ら考え決断することができます」。そのために重視しているのが『5つの力』だ。「〈視野の広さ〉〈冒険心〉〈専門性〉〈共感力〉〈向上心〉です。教育を通してこれらをはぐくむことが 、私たち教員の最大の使命だと思うのです」。平川校長の目は、生徒たちの明るい未来にまっすぐ向けられていた。

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒184-8555 東京都小金井市梶野町4-8-1
TEL0422-37-6441
学校公式サイトhttps://www.dendai.ed.jp/
海外進学支援
帰国生入試
アクセス東小金井駅(JR中央線)徒歩5分
国内外大学合格実績(過去3年間)東京工業、名古屋、電気通信、東京農工、東京海洋、東京外国語、東京学芸、山形(医)、埼玉、千葉、岩手、山梨、長崎、防衛、東京都立、順天堂(医)、昭和(医)、早稲田、慶應義塾、上智、東京理科、学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政、芝浦工業、東京電機など