麻布中学校

教養総合授業「日本的な美意識の原点を探ろう」
教養総合授業「日本的な美意識の原点を探ろう」

授業は教員と生徒との真剣勝負の場 「最終学歴は麻布」という誇りの教育

注目ポイント

  • 中1の社会「世界」で地球儀を俯瞰する視点を養う
  • 高1の「基礎課程修了論文」で思考力を研鑽する
  • 人生の土台となる教養をはぐくむ必修授業「教養総合」

麻布独自の中1社会科目「世界」で歴史・地理・公民の理解が深まる

港区でもひときわ国際色が豊かな地区に立地する麻布学園。同校は、生徒の教養を培うカリキュラムが充実している。

例えば、中1の社会科には「世界」という同校オリジナルの科目がある。入学後の生徒はまず、現在の社会状況を大まかに学ぶ。「引きの視点」で世界を俯瞰し、中2からは日本史、世界史、地理、公民といった科目を通じて「寄りの視点」で掘り下げていく。「引き」から「寄り」という手順を踏むことで、生徒は知識と知識が線のようにつながる手ごたえを実感することができる。

えてして社会科は暗記科目になりがちだが、同校では知識のインプットでは終わらない。生徒はとにかく自らの考えを文章としてアウトプットする機会に恵まれるのだ。高1の年度末には社会的なテーマを設定し「基礎課程修了論文」を執筆する。自ら取材し、参考文献も記した本格的な論文だ。論文執筆に必要な作法は段階を経て習得しているため、大学院レベルの論文もあるといい、優秀な作品は年に1度刊行される校内誌『考える葦』に掲載される。取り扱うテーマは「フェイクニュースの拡散と人間の心理」「キリスト教世界の博物学」など多岐に亘り、生徒は関心のあるテーマをとことん掘り下げる。同校の自由な校風は、生徒たちの思考の広がりを促しているのだ。

生徒たちの心に深く刻まれる高1・2の名物授業「教養総合」

麻布の名物授業とも言えるのが高1・高2が対象の必修授業「教養総合」だ。語学・人文・科学・芸術・スポーツの5分野とリレー講座があり、古今東西、硬派なテーマからユニークなテーマまで、その種類は70以上にのぼる。中でも、複数の講師が担当するリレー講座は、1つのテーマをさまざまな切り口からアプローチする重厚な内容となっている。例えば「現代医療を考える」という講座では現役の医師らが招かれ、先進医療と切り離すことができない生命倫理の問題についても語るほか、感染症が浮き彫りにした社会課題についても深く掘り下げる。

社会の第一線で活躍する若手の同校OBが外部講師を務める講座もあり、「キャリア教育」としての効果も生まれている。毎年、教養総合の授業が生徒たちの心に刻むインパクトは大きく、平秀明校長は「知識以上のものを得ている」と語る。世の中のあらゆる問題を学ぶことで生徒たちに新たな問題意識が芽生え、従来の教科の学びがさらに充実する効果をもたらしているという。

一生ものの学びにいそしみ人類の未来に思いを巡らせる

麻布が教養にこだわる理由について、平校長は次のように語る。「プログラミングや外国語など、何か専門のスキルに長けていれば、目の前の問題に対処することはできるでしょう。しかし、中長期的な視点で“未来をどう生きるか”を思考するためには、スキルだけではなく教養が必要です。中高の6年間は、文学、歴史、科学、宗教など、人類が培ってきた知を吸収し、物事の本質を考える期間だと考えています」。

コロナ禍が世界に与えた影響は長期化し、気候変動は待ったなしの状況だ。こうした激動の時代の中でこそ「人間の本質が試される」と平校長は語る。社会に玉石混交の情報が溢れる今、思考を巡らせて未来を見通し、しかるべき決断をする人物が求められる。そのためには広く深い教養が必須だと主張するのだ。

教養を重視し、大学入試対策に偏重した教育とは一線を画す同校だが、戦後、東大合格者数トップ10から一度も外れたことのない唯一の学校である点は示唆に満ちている。
 
同校の教員は、学問を究めた大学院修士・博士課程の出身者も多く、日々の授業は「教員と生徒との真剣勝負の場」とされている。6年間の一生ものの学びは「最終学歴は麻布」という誇りとして脈々と受け継がれていくだろう。

昨年11月に開催された第74回文化祭の後夜祭風景
昨年11月に開催された第74回文化祭の後夜祭風景

学校データ(SCHOOL DATA)

所在地〒106-0046 東京都港区元麻布2-3-29
TEL03-3446-6541
学校公式サイトhttps://www.azabu-jh.ed.jp/
海外進学支援
帰国生入試
アクセス広尾駅(東京メトロ日比谷線)徒歩10分
麻布十番駅(東京メトロ南北線、都営大江戸線)徒歩15分
目黒駅(JR山手線)・新橋駅(JR山手線)より都営バス(橋86)「愛育クリニック前」下車徒歩1分
国内外大学合格実績(過去3年間)東京、京都、東京工業、一橋、北海道、東北、筑波、東京医科歯科、東京農工、横浜国立、千葉、慶應義塾、早稲田、シカゴ、パデューなど